2026年2月6日、ラオスで行われた「ラオス開発宝くじ」の抽選で、妙な事件が起きた。正式な6桁の当選番号は「837430」。ところが、ラオス国営テレビの放送画面には「387430」と表示されてしまったのである。
これだけなら、「テレビ局が数字を1か所間違えました」で済む話かもしれない。ところが翌7日、国営テレビが誤表示を認めて謝罪するころには、話は銀行口座まで進んでいた。誤って表示された「387430」を購入していた女性が、宝くじアプリ上で6桁当選と判定され、賞金が口座へ送金されたものの、約30分後にその金額が取り消されたとSNSへ投稿したのである。
抽選結果を後から変えた事件ではなかった
まず整理しておきたい。公式側の説明によれば、抽選そのものがやり直されたわけでも、「当選番号を後から変更した」わけでもない。中央の宝くじ委員会には、正しい番号837430が記録され、認証されていたという。
間違っていたのはテレビ画面に出た387430だった。つまり表向きには、単純な「放送上の表示ミス」である。
ところが、ここに妙な部分が残る。誤番号を購入していたPaNoy Bouttavong氏によると、宝くじアプリでも自分の番号が6桁当選として扱われ、賞金を銀行口座へ移すところまで進んだという。正式番号は最初から正しく認証されていたのに、別の番号がデジタル上では「当たり」として処理されたことになる。
テレビ画面だけの表示ミスだったなら、普通は銀行口座まで話は来ない。テレビ表示と宝くじアプリが同じ誤データを参照していたのか、別々の場所で入力ミスが起きたのか。公開されている説明からは、その技術的な経路までは分からない。
AI生成による概念イメージです。実際のシステム経路、放送画面、アプリ、人物を再現したものではなく、画像内の数字も実際の当選番号を示すものではありません。
賞金は「30分だけ自分のもの」だったのか
現地英字紙『Laotian Times』によれば、PaNoy氏は入金後、およそ30分で金額が取り消されたと主張している。銀行BCELもその後、宝くじ販売業者からの指示を受け、取り決められた手順に従って処理したと説明した。
ラオス開発宝くじの6桁賞金は、1,000キープ購入の場合4億キープと紹介されている。2026年2月6日の市場為替レートを使って単純換算すれば、日本円でおよそ290万円前後の規模になる。
ただし注意したい。公開報道からは、PaNoy氏が実際に購入した金額や、取り消された金額そのものが4億キープだったことまでは独立して確認できない。 「6桁当選として処理され、送金後に取り消された」という部分と、「6桁を1,000キープ買った場合の賞金は4億キープ」という賞金体系は、分けて考える必要がある。
「それ、詐欺被害でも30分で戻せないの?」という第二幕
事件は宝くじの番号ミスだけでは終わらなかった。SNSでは、「宝くじ側が間違えた金は短時間で取り戻せるのに、詐欺で送金した金はなぜ簡単に戻らないのか」という疑問が広がった。関連動画には50万回、80万回を超える視聴が集まったと報じられている。
BCELは、今回については宝くじ販売業者の決済サービス提供者として、その指示に基づいて処理したと説明している。なおBCELはラオス政府が60%を保有する銀行である。
もちろん、宝くじ関連の支払い処理を訂正するケースと、犯罪者など第三者へ正常な手続きで送金された金を取り戻すケースは同じではない。日本でも誤振込の「組戻し」が常に即時成立するわけではなく、すでに入金済みの場合は受取人との調整が必要になることがある。それでも利用者から見れば、「間違って払った側が宝くじ会社なら30分、騙された一般人ならそうはいかない」という光景は、どうにも引っかかる。
AI生成による解説イメージです。実際のBCEL店舗、利用者、銀行職員、取引画面を再現したものではありません。
実は2022年にも「幻の当選番号」があった
さらに調べると、この話には嫌な既視感がある。2022年1月14日のラオス開発宝くじでも、国営テレビ第1チャンネルの放送では6桁番号が331496と表示されたのに、その後の正式発表は337496だった。
しかも331496を実際に1,000キープ購入していた女性が存在し、テレビ表示どおりなら賞金は4億キープ。こちらも「当たったと思ったら、正式にはハズレ」という騒動になった。
2022年はテレビ画面を見て「4億キープ当選」と思わせる騒動だった。そして2026年には、少なくとも本人の投稿によれば、アプリ上の当選判定から銀行口座への送金まで進んだ。 似た種類のミスが、今度は決済まで絡む騒動になったところが、この事件最大のB面かもしれない。
なお2026年事件について、テレビの誤表示とアプリ上の誤判定がどのようなデータ連携によって起きたのか、責任分界がどこにあったのかについては、確認できた公表情報だけでは判然としない。単なる「テレビ画面の表示ミス」と片付けるには、少々先まで数字が歩きすぎている。
AI生成による象徴イメージです。実際の抽選機器、宝くじアプリ、現場を再現したものではありません。
【編集者が思うこと】
テレビに間違った数字が出た、まではまあ人間だから分かる。でも、その数字を持っていた人のアプリが「おめでとうございます」になって、金まで銀行へ行ったとなると、話が違うんだよな。正式番号は最初から別にあったというなら、途中にチェックする関所はなかったのか。
しかも4年前にも似たことをやっている。前回はテレビを見て「当たった!」、今回は銀行口座を見て「本当に当たった!」――からの消滅。システムは進歩しているのに、幻の当選体験まで高性能にならなくてもいいだろう。そして俺が一番気になるのは、やっぱり「この30分の速さ、詐欺被害者にも使えないの?」という現地のツッコミである。そこ、世界共通で気になるところだと思う。
参考資料
- Laotian Times「Lottery Error Triggers Broader Debate Over Scam Cases and Banking Safeguards in Laos」(2026年2月12日)
- Banque Pour Le Commerce Exterieur Lao Public(BCEL)「Share Structure」
- 日本銀行「外国為替市況 2026年2月6日」
- MGR Online「สาวลาว ช็อก! หวยลาวประกาศรางวัลที่ 1 ผิด ทำพลาดเงินล้าน」(2022年1月16日)
- MThai「หวยลาว งวดวันที่ 14 มกราคม 2565」(2022年1月14日)