2025年9月9日、台湾・嘉義県布袋鎮の民家に届いた電気料金の請求が、妙な意味で注目を集めた。普段はほとんど人が住んでいない三合院の家に、8月分として25万9457台湾ドル、日本円でおおよそ120万円台半ばの請求が出たのである。
持ち主側はSNS上で、「又不是挖比特幣(ビットコインを掘っているわけでもないのに)」と驚きを隠さなかった。だが調べると、話は“謎の大電力消費”ではなく、新しい電力量計の交換後に起きた入力ミスだった。実際の請求額は、300台湾ドル台に修正されたと報じられている。
ほぼ無人の家に、なぜ約126万円の請求が出たのか
この家は、台湾南部で見られる伝統的な中庭型住宅「三合院」とされる。しかも、普段から常時人が住んでいる家ではなく、親族が時々様子を見に行く程度だったという。報道では、2025年7月の台風ダナスの被害で屋根まで飛ばされ、しばらく停電も続いた家として紹介されている。

その家の電気代が突然25万9457台湾ドルになった。請求書上の使用量は3万kWh超だったとされ、常識的に考えて、扇風機と照明をたまに使う程度の空き家の数字ではない。冷静に見れば、「怪奇現象」より先に「どこかで事務が壊れている」と考えるべき案件である。
しかも、この家では電気代を銀行口座から自動引き落としにしていた。異常が分かったのは、口座の残高不足通知が来たからだった。皮肉な話だが、残高が足りなかったからこそ、請求ミスが早く見つかったとも言える。もし口座残高に余裕があれば、いったん引き落とされてから面倒な訂正騒ぎになっていた可能性もある。

原因は盗電でもマイニングでもなく、かなり地味な「人間系トラブル」
台湾電力側の説明によれば、原因は新しい電力量計への交換後に行われた検針データ入力の誤りだった。つまり、電力メーターが暴走したわけでも、誰かが裏で盗電していたわけでも、まして空き家の中で仮想通貨採掘が始まっていたわけでもない。

この話のB面は、原因そのものよりも、そんな異常値が請求書になるところまで通ってしまった点にある。300台湾ドル台で推移していた家に、いきなり3万kWh超という数字が入り、それがそのまま25万9457台湾ドルの請求として出た。ここには、メーター交換、数値入力、請求処理、引き落としという複数の段階があるはずで、どこか一か所でも引っかかれば止まりそうな話である。
報道では、台電が台風被害後の復旧対応に追われていたことも説明に含めている。現場が混乱していれば、平時なら拾えたミスが抜けることはある。そう考えれば筋は通る。ただし、それでも「空き家に約126万円」という極端な数字が最後まで通るのは、なかなか味わい深い。システム化が進んでも、最後に人間が数字を扱う以上、事故は妙にアナログな形で出る、という見本でもある。

「同じ村でも高額請求がある」という話は、広げすぎない方がよい
発端となったSNS投稿では、同じ村の高齢者宅でも1万台湾ドル超の請求が複数ある、という趣旨の訴えも出ていた。ただし、現時点で広く確認できる報道では、今回の入力ミスとして具体的に確認されたのはこの1戸という扱いにとどまっている。ここは話を盛りたくなる部分だが、B2としてはむしろ慎重でいた方がいい。
「村全体で請求事故が起きていた」のか、「SNS投稿者が周辺の不満もまとめて書いた」のか、「高額請求に見えても別事情だった」のかは、確認が足りない。海外ネタほど、ここを曖昧にすると雑になる。妙な話ほど、妙な部分だけを正確に残した方が強い。
日本から見ると引っかかるのは、「自動化しても最後は人間」という点
日本でもスマートメーター化や料金の自動引き落としはかなり進んでいる。だからこの事件を「台湾だから起きた変な話」とだけ見るのは浅い。むしろ見えてくるのは、自動化された請求システムも、途中のどこかで人が数字を扱えば、その瞬間に古典的なミスが入り込むという当たり前の事実である。
空き家に約126万円の請求。見出しだけなら笑い話に近い。しかし中身は、災害後の復旧、設備交換、事務処理、銀行引き落としという、いくつもの仕組みが連結した末に起きた“人間臭い事故”だった。ビットコインは掘っていなかった。だが、システムの穴はしっかり掘られていたらしい。
【編集者が思うこと】
こういう話、俺はけっこう好きなんだよね。台湾をバカにしたいんじゃなくて、「最新っぽい仕組みの中で、最後にやらかすのは昔ながらの人間」ってところが、すごくB面っぽい。空き家に25万台湾ドルの請求って、最初は珍事件に見えるけど、実際は災害復旧のバタつき、数字入力の凡ミス、自動引き落とし任せの生活が一列につながって起きた事故だった。
日本から見ると、ここで引っかかるのは「そんな異常値、途中で止まらないのか」という一点だよな。300元台の家に3万kWh超が入っても通るなら、システムは立派でも見張り番が寝ていたようなものだ。しかも残高不足が最後の安全装置ってのも妙で、口座に金があったら発見が遅れたかもしれない。便利さって、ときどきこういう変な落とし穴を隠す。