トイレに行きたい→閉店スーパーへ車で突入 米60歳、被害5万ドルの“入店”

2026年9月27日午前4時28分。米テキサス州ヒューストン近郊のローゼンバーグで、閉店中のスーパー「Kroger(クローガー)」に1台のChevrolet車が突っ込んだ。

ブレーキとアクセルの踏み間違いではない。ローゼンバーグ警察によれば、運転していた60歳の男性は意図的に加速して、薬局側の入口を突破したという。

では、なぜそんなことをしたのか。

「トイレを使いたかった。ところが店のドアが施錠されていた」――警察が明らかにした理由は、それだった。

開店1時間半前、ドアが開かないので車で入った

現場はローゼンバーグのBrazos Town CrossingにあるKroger。店舗公式情報では通常の営業時間は毎日午前6時から午後11時まで。事件発生は午前4時28分なので、まだ開店まで約1時間半あった。

警察によれば、男性はトイレを使う必要があり、入口が施錠されていることに腹を立てた。そして徒歩で別の店を探すでも、開店を待つでもなく、車で入口そのものを突破するという選択をした。

公開された現場写真では、車はガラス扉を突き破って店内まで進入している。幸い負傷者はいなかった。ただし閉店中だから完全な無人だったわけではなく、当時は店内の別の場所で従業員が作業していたと報じられている。


閉店中の米国郊外型スーパーと入口前の車を描いたイメージ
AI生成によるイメージ。実際の現場・車両・店舗を再現したものではありません。

酔っていたわけでもない

こういう事件なら、「酔っぱらいだったのでは」と考えたくなる。しかしRosenberg Police DepartmentのSebastian Muñoz警部補は、現地Univisionの取材に対し、男性には酒に酔っている、あるいは薬物の影響下にあることを示す兆候はなかったと説明している。

しかも、ぶつけたあとに逃走したわけでもない。男性は現場に残った。

つまり、現時点で確認されている情報だけを並べると、かなり妙な構図になる。酒や薬物で正常な判断を失っていたと確認されたわけではなく、逃げる意思も見せず、それでも「ドアが開かない→車で入る」という判断だけが実行されたのである。

なお男性はJames Mansell Lancaster Jr.、60歳と報じられており、ミシシッピ州Natchez在住とされている。なぜこの時間にテキサス州ローゼンバーグにいたのかは、公表された情報からは確認できない。

しかも近所には24時間営業の店があった

ここでさらにB面度が上がる。

地元メディアChronが周辺店舗を確認したところ、Krogerの近くには24時間営業の7-Elevenがあり、道路の向かい側にはホテル、さらに午前5時開店のMcDonald’sもあったという。

もちろん、男性がそれらの店を知っていたかどうかは分からない。「近くに店があるのを知りながらKrogerに突入した」とまでは言えない。しかし少なくとも、周辺に選択肢がまったく存在しない場所ではなかった。


大型スーパーやコンビニ、ホテルなどが点在する米国郊外商業エリアのイメージ
AI生成による解説イメージ。実際のローゼンバーグの地図・店舗配置を再現したものではありません。

5万ドルの入口破壊で「重罪」へ

トイレを使いたかっただけ――で済まないのは、当然ながら壊したものが大きすぎるからだ。

損害額は、警察による推計として約5万ドルと報じられている。男性はcriminal mischiefの容疑で逮捕された。

この「criminal mischief」は日本語では器物損壊に近いが、テキサス州法では損害額によって扱いが大きく変わる。Texas Penal Code §28.03では、所有者の同意なく故意または認識しながら財産を損壊し、損害額が3万ドル以上15万ドル未満ならthird-degree felony、つまり第3級の重罪に分類される。

さらに州法上、第3級重罪で有罪となった場合の刑罰範囲は2年以上10年以下の拘禁に加え、最大1万ドルの罰金が科される可能性がある。ただし、これは法律上の刑罰範囲であり、この男性に実際にその刑が科されると決まったわけではない。

「トイレに入りたい」という数分の問題が、約5万ドルの損害と重罪容疑に変わった。どう考えても割に合わない。


店舗入口の破損と5万ドルの損害、法律問題への発展を表したイメージ
AI生成による解説イメージ。実際の現場・車両・警察車両・裁判所を再現したものではなく、有罪判決を示すものでもありません。

「アメリカだから」で片づけると、少し違う

巨大な駐車場、深夜の幹線道路、点在する大型店。そして、どこへ行くにも車。現場周辺の風景だけを見ると、確かにアメリカ郊外らしい「車が足」の世界ではある。

ただ、この事件を「アメリカ人は豪快だ」で笑って終わらせるのも違うだろう。近所には別の施設があり、警察自身もSNSで冗談交じりに「営業中の店を探すよう強く勧める」と呼びかけている。これは米国では普通の行動なのではなく、現地警察から見てもわざわざ注意を促すほど異例の行動だったのである。

そして妙なことに、肝心な一点は分かっていない。

男性は結局、目的だったトイレを使えたのか。

確認できた報道では、その答えは明らかにされていない。

B面メーター
地球のB面・編集部判定
B面度
★★★★★
マヌケ度
★★★★★
社会的深刻度
★★★☆☆

【編集者が思うこと】

アメリカって、こういう「そこまでやるか?」みたいなニュースが時々出てくるんだよな。でも今回、俺が一番引っかかったのは、トイレに行きたかったことじゃない。

ドアが閉まっているのを見て、「じゃあ車で開けるか」になるところ。

しかも酔っぱらっていた形跡もないという。少なくとも俺なら、日本で同じ状況になればコンビニを探すとか、ガソリンスタンドへ行くとか、まず別の方法を考える。それが数秒の判断で「入口を車で突破」に飛ぶ。この距離感が妙なんだよな。

とはいえ、「やっぱりアメリカ人は」と国民性の話にするのも雑だと思う。現地警察だって冗談交じりに「開いている店を探してくれ」と言っているんだから、向こうでも普通じゃない。

ただ、広い駐車場に大型スーパー、移動は何でも車というアメリカ郊外の舞台装置に、短気な人間が一人乗っかると、トイレひとつで被害5万ドルの事件が完成してしまう。そこが今回のB面なんだと思う。

参考資料