「毛が入っているから払わない」――だが、その毛は乾いていた。ペナン“胸毛チャークイティオ”疑惑

料理に毛が入っていると訴え、その代金を払わない――そこまでは、飲食店でたまに起きる異物混入トラブルである。

ところが2026年10月4日午後5時台、マレーシア・ペナン島のガーニー・ドライブ(Persiaran Gurney)周辺の飲食店で起きた一件は、少々様子が違った。外国人とみられる男性客がチャークイティオの中に毛が入っていると訴え、約30リンギットの代金を払わず、同行女性と店を出た。

店長が引っかかったのは、毛が入っていたことではない。「この毛、なぜ乾いている?」――そこだった。


ペナンの飲食店でチャークイティオの異物を確認する場面を描いたAI生成イメージ
AI生成によるイメージです。実際の店舗・人物・毛の本数や形状を再現したものではありません。

「毛が入っている」――6~7本、しかも短かった

現地報道によると、男性と同行女性は当初フライドチキンを注文しようとしたが、売り切れだったため、チャークイティオ、卵、飲み物を注文した。合計は約30リンギットだったという。

チャークイティオは、平たい米麺を卵やモヤシ、エビなどと強火で炒めるペナンを代表する料理だ。ペナン観光当局も代表的なストリートフードとして紹介しており、ガーニー・ドライブ周辺も屋台料理や飲食店で知られるエリアである。

しばらくして男性が「料理に毛が入っている」と店員へ訴えた。店長の鄭氏が確認すると、皿には6~7本ほどの非常に短い毛があったという。

ただ、ここで店長は違和感を覚えた。毛は短く、まつ毛のようにも見えない。そして何より、炒め物の中から出てきたというわりに、毛が乾いていたと店長は現地メディアに説明している。

店長がCCTVを巻き戻した

店側が料理を確認している間に、男性と女性は店を出ようとした。店長が未払いを指摘すると、男性は料理の品質に問題があるという趣旨の理由で支払いを拒否。そのまま店を去ったとされる。

どうにも腑に落ちない店長は、その後、防犯カメラの映像を確認した。

すると男性が食事中、何度も手を服の中へ入れ、その手を皿の方向へ持っていくような動きが映っていたという。店側は、男性が胸元から毛を抜き、料理へ入れていたのではないかとみている。


飲食店スタッフが防犯カメラ映像を確認する場面を描いたAI生成イメージ
AI生成によるイメージです。モニター内の映像を含め、実際の防犯カメラ映像・店舗・人物を再現したものではありません。

ここは区別しておきたい。「胸毛を6~7本抜いて入れた」と警察や鑑定機関が確認したわけではない。6~7本というのは店側が皿の中で確認した毛の本数であり、防犯カメラについて報道されているのは「男性が何度も服の中へ手を入れ、皿へ手を動かしていた」という内容だ。

つまり現時点では、店側の証言とCCTV映像から浮上した「胸毛投入疑惑」である。

「乾いていた」は名推理だが、証明ではない

店長の「最初からチャークイティオに入っていたなら、毛にも油が付いているはず」という見方は、かなり説得力がある。高温の鍋で油と一緒に炒める料理だけに、乾いた短い毛が何本も出てくれば怪しく感じるのも無理はない。

ただし、毛が乾いていたことだけで、客が入れたと科学的に証明できるわけではない。調理後や配膳後に混入した可能性まで、それだけで完全に消えるわけではないからだ。

今回おもしろい――と言っては店には気の毒だが――のは、毛そのものよりも、小さな違和感から店長がCCTVを見返し、そこで妙な動きを発見したという流れである。

30リンギットのために、そこまでやるのか

店側はその後、映像を他の飲食店関係者にも共有し、同様のトラブルへの注意を呼びかけたという。

一方、今回確認できた10月8日までの主要報道では、男性の国籍や氏名、同行女性との関係は明らかになっていない。また、警察が男性を特定した、逮捕した、あるいは「実際に胸毛を料理へ入れた」と認定したという公的発表も確認できない。

したがって「30リンギットを浮かせるために胸毛を入れた詐欺師」とまで断定するのは早い。

それでも、店側の説明どおりなら話はかなり情けない。高級レストランで何千リンギットもの請求を逃れようとしたわけではない。チャークイティオと卵と飲み物、合わせて約30リンギットである。

世界が違っても「そこまでして払いたくないのか」という客はいるらしい。そして今の時代、店員の目はごまかせても、天井のカメラまでは一緒に騙されてくれない。


チャークイティオと伝票、防犯カメラを象徴的に描いたAI生成イメージ
AI生成による象徴的なイメージです。実際の客・店員・伝票・店舗や事件現場を再現したものではありません。

B面メーター
地球のB面・編集部判定
B面度
★★★★★
マヌケ度
★★★★★
社会的深刻度
★☆☆☆☆

【編集者が思うこと】

俺が妙だと思うのは、胸毛だったかどうか以上に、店長が「この毛だけ乾いてるぞ」と引っかかったところなんだよな。

日本でも「髪の毛が入っていた」「虫が入っていた」で店ともめる話はある。でも、本当に自分の毛を仕込んで代金を払わず帰ろうとしたのだとしたら、30リンギットを惜しんで、わざわざ何度も胸元に手を突っ込む。その労力と恥ずかしさを考えたら、もう普通に払ったほうが楽だろう。

しかも昔なら「客がそう言っている」「店は否定している」で終わった話が、今はCCTVを巻き戻せば食事中に何をしていたかまで残っている。

国が違っても、セコいことを考える人間の発想はあまり変わらない。ただし、防犯カメラの数だけは昔より確実に増えた。悪知恵だけ昭和のままで、証拠だけ令和仕様になっている。そこが、この事件の一番B面っぽいところだと思う。

参考資料