2026年10月19日、英国の料理宅配サービス「Just Eat」が、奇妙な料理画像について謝罪したと英国メディアが報じた。
画像に写っていたのは、コーラのような炭酸飲料。その中には、ソーセージ、ベーコン、目玉焼きが浮かんでいた。
これは新手のゲテモノ料理ではない。AIが「Breakfast Soda」という料理名を、朝食入りの炭酸飲料と勘違いして生成した画像だった。
Just Eatは、写真のない飲食店メニューをAIで画像化する試験を進めていた。しかし、誤った画像が相次いで見つかり、展開を一時停止した。
しかも同社によれば、AI生成画像はすべて人間が手作業で確認していたという。
では、AIは何を間違え、人間はなぜ見抜けなかったのか。現地報道に加え、実際の飲食店メニューまで調べてみた。
「Breakfast Soda」は、本当に朝食入りの飲み物なのか?
事件の舞台となった北アイルランドは、英国を構成する地域の一つ。ここには、ソーダブレッド(Soda Bread)という伝統的なパンがある。
パン生地を膨らませるために、酵母の代わりに重曹(ベーキングソーダ)を使うことが名前の由来だ。
地元では、このパンにソーセージやベーコン、卵を挟んだ朝食が親しまれている。「Soda」は炭酸飲料ではなく、パンを意味している場合があるのだ。

ソーダブレッドを使った朝食サンドのイメージ。実際の店舗の商品写真ではありません。
実際の商品を確認するため、Just Eatに掲載されているベルファストの飲食店メニューを調べた。
すると「Fuchsia Cafe」では、まさに「Breakfast Soda」という商品が販売されていた。説明には、ソーセージ2本、ベーコン2枚、目玉焼き1個を挟んだ料理とある。
さらに「Charlotte’s Café」でも、「Bacon and Egg Soda」は、焼いたソーダブレッドにベーコンと卵を挟んだ料理と明記されていた。
つまり、少なくとも現地の複数店舗では「Soda」がパンを指すことを、実際の販売メニューから確認できる。
なお、この2店舗が今回の問題画像を掲載した店舗と同一であることまでは確認できていない。
パンが飛行機に、チーズが寿司に!
AIの珍解釈は、朝食ソーダだけではなかった。
英国の食品業界紙『The Grocer』やアイルランドの『The Journal』などが報じた事例を、間違いの原因別に整理すると次のようになる。
| メニューの表記 | AIが生成したもの | 誤解したとみられる点 |
|---|---|---|
| Breakfast Soda | 具材が浮かぶ炭酸飲料 | 地域特有の料理名 |
| Garlic Bread Plane | パンでできた飛行機 | Planeという誤記 |
| Cheese Roll | チーズ入り寿司 | Rollの複数の意味 |
| Burger Sauce | 小さなバーガー入りのソース容器 | ソース名の直訳 |
| Sauvignon Blanc | スイカの果肉入りワイン | 風味の説明を実物と誤認 |
| Smoked Cod | 粉を載せた魚 | 材料情報を完成品に反映 |
「Garlic Bread Plane」は、本来なら「Plain」(プレーン)だったと考えられる表記だ。ところが「Plane」は飛行機。AIは、ガーリックパン製の航空機を作ってしまった。
ワインの例も興味深い。ソーヴィニヨン・ブランの説明に登場したスイカの風味が、実際のスイカの果肉として描かれたのである。
こうして分類すると、問題は単純な料理知識の不足だけではない。
地方の言葉、綴りの誤り、単語の多義性、食材と風味の違い。それぞれ異なる情報の解釈で失敗している。
なお、Just Eatが実際にAIへ入力した指示文の全文や、使用した画像生成モデルの名称は公開資料から確認できない。したがって、具体的な内部処理までは断定できない。
一番奇妙なのは「人間も確認していた」こと
アイルランドのニュースサイト『The Journal』は、Just Eatへの取材で重要な説明を得ている。
同社によれば、すべてのAI生成画像を人間が手作業で確認していたという。
では、なぜ粉を載せた魚や、寿司になった料理が掲載されたのか。
ここで、人間による画像チェックを三つに分けて考えてみたい。
第一は、画像そのものに不自然な部分がないか。第二は、料理名と画像が一致しているか。そして第三は、実際にその店が販売する料理と一致しているか、という確認だ。

画像確認の仕組みを説明するためのイメージ。Just Eatの実際の検品現場や社内システムを再現したものではありません。
たとえ画像として美しくても、料理名を知らなければ間違いを見抜けない。さらに料理名を知っていても、具材や盛り付けがその店舗の商品と一致するとは限らない。
「人間が確認した」という事実だけでは、「正しい商品画像だと確認した」ことにはならない。
ただし、Just Eatの確認担当者がどの項目を審査していたのか、具体的な手順は不明である。担当者が画像を見ずに承認したなどと断定する根拠はない。
AI生成と表示すれば、料理が違っても問題ない?
Just Eatは、生成した画像に「AI-generated」という表示を付けていた。
しかし、画像がAI製であることを知らせるのと、販売する商品の内容を正確に伝えるのは別の問題だ。
英国の競争・市場庁(CMA)は、2024年成立のDMCC法に関する事業者向けガイダンスで、消費者を誤認させる商行為が規制対象となることを説明している。
また、英国の広告基準「CAP Code」3.1にも、消費者を重大に誤認させる広告表現を禁じる規定がある。ただし、今回の個別のメニュー画像にこの広告規定が適用されるかは、表示形態などによる。
今回の個別のメニュー表示について、これらの規定への違反が認定されたという公開資料は確認できない。
問題の画像は笑えるが、料理写真は購入判断に使われる情報でもある。AIが作ったという注記だけでは、内容の正確性まで保証できないのである。
Just Eatは、なぜAIに料理を描かせたのか?
そもそも、この試験には合理的な目的があった。
小規模な飲食店が、すべての料理をプロのカメラマンに撮影してもらうには費用がかかる。AIで画像を補えれば、店舗の負担を減らし、利用者にもメニューを分かりやすく示せる。
Just Eatは、従来から地域のプロカメラマンによる撮影も支援していると説明している。
今回の問題を受け、同社は不正確な画像の削除を進め、AI画像機能の展開を一時停止した。ただし、技術の開発そのものを断念したわけではない。
対象店舗数、誤生成した画像の割合、正式な再開時期などは不明である。
今回の騒動が示したのは、AI画像が必ず失敗するということではない。実物を見せるべき場面で、生成した画像を何と照合するのか。その仕組みこそが重要なのである。
【編集者が思うこと】
いやあ、コーラの中にベーコンと目玉焼きとは、なかなかの発想だ。メニューにあったら、一度は二度見するだろう。
ただ、今回いちばん引っかかったのは、人間も確認していたという部分なんだよな。
知らない料理をAIが間違えるのは、まあ分かる。でも、それを確認する人間まで同じ料理を知らなかったら、どうなるのか。
料理を作った店の人に確認してもらえば済む話にも思える。しかし、それを毎回やるなら、そもそも何をAIで省力化したかったのかという疑問も出てくる。
笑える事件だけど、これが食品ではなく、機械の部品や薬の説明画像だったら、ちょっと笑えない。
AIの間違いより、それを正しいと思って通してしまう仕組みのほうが、よほど気になるのである。
参考資料
- Just Eat:Fuchsia Cafe 実際の朝食メニュー
- Just Eat:Charlotte’s Café 実際の朝食メニュー
- Visit Belfast:Local Cuisine in Belfast(2026年10月6日)
- The Independent:Just EatのAI料理画像問題(2026年10月19日)
- The Grocer:Just Eat pauses AI imagery trial(2026年10月20日)
- The Journal:JustEat apologises for AI-generated slop after bizarre takeaway pictures found on Irish menus(2026年10月20日)
- 英国政府・CMA:What businesses need to know about unfair commercial practices
- 英国ASA:CAP Code Section 3 — Misleading Advertising